今日はカフカの「城」を読んだ。書斎の世界文学全集から選んだ。カフカの「城」解釈の一般例として、宗教的であるとか言われている。宗教的かどうかは別にして確かにこの話は人間生活を原点としながらも、あくまでも自己の自由を希求する主人公にフォーカスしている。故郷も家族も捨てて、身分も決して高くない測量士が全く見ず知らずの城からじきじきに招待されている。結局彼は城を目指しながらも永久に村に止まったまま神の名にふさわしい城の絶対的領域に踏み込めないでいるわけだ。村は彼にとって安住の地であり、情報を仕入れる拠点でもある。人間的生活を営む村と、中がどうなっているのか分からない神秘的な城。これはある種の矛盾である。希望する方向に進みながらも、決してたどり着くことのない絶望がある。故郷を脱した時の開放感と、たどり着いた先の村のコミュニティとしての閉鎖性。。。いくら高みを望んでも所詮、人間的生活からは脱することが出来ないということなのか。
 それから官僚的だというもの。これはやはり当時の階級による身分区分のことを言っているのだと思う。このことは唯一、城について鍵を握るのは秘書官のみという、取り次ぐ人間が他にいないという排他的ムードをみれば明らかだ。当時の階級の厳しさを物語っている。少し作品より前になるが確かに中世ヨーロッパにおいては一部の商工業者が村を動かしていたぐらいだから、あまり自由な行動もきかなかったのだろう。カフカを通じて近代社会を考えるきっかけになるかも知れない。