また陽水のお話。昔、車の中でよく聴いた古い古いカセットテープがありまして。「A面コレクション」というタイトルで、87年に発売されカセットのみで、CDにはなってない。こないだ、必死で探し回ったけども、無かった。まず、収録曲が凄すぎる。「愛されてばかりいると」はアルバム「ペリカン&ライオン」のとは違うテイクが収録されている。また、シングルカットのみで発売されたのが多く、「悲しき恋人」は恐らくここでしか聴けないと思う。good,good-byeも名曲。bright eyesはS&Gも歌っていたものを、訳詞にしてアレンジしたもの。クレイジーラブはドラマの主題歌にもなった。……まさか、過って棄てたことはないと思うけども。「青空、ひとりきり」は陽水が離婚したときに作った曲らしい。「退屈テレビ」って。
 陽水の歌詞には独特のセンスがある。言葉遊びの部分と、真ん中とも端っことも取れない、ニュアンスの駆け引きが面白い。ニューミュージックなどと紹介されるが、これほど幅広い年齢層に受け容れられているアーティストは少ないと思う。我々の世代であれば、ようやくピンときて、「少年時代」ぐらいなものだ。これは音楽に限ったことではない。何でも少しかじったぐらいで、人よりも、ずいぶん多くのことを知っているような人をたまに見かける。(人と話してて)本当に、能力の優れた人ほど、簡単には手のうちをばらさないのがお約束なわけで、そういう意味では、多くを知り過ぎた人は損だろう。鍋島の「葉隠」にも同じようなことが書いてあった。目上の人と同席する時は、知ったかぶるな、とか。……それはともかくとして、彼のテープが行方不明だ。奥の手はu-tubeでセコセコ一曲ずつ…ダメダメ、私的利用以外は。もちろん。