東京的なものに憧れて

 今も忘れぬ4つの頃、親戚の葬儀があって出かけたのが最初だった。まだ幼かった俺には東京砂漠の広大さには気づかず、当時の印象は今とはまるで違う。それでもやっていること、集まってくる人間が多様で、様々な想像力が街全体に漲っているのだと幼心ながら感じていた。ここが日本を代表する情報の発信基地であり、日本を代表する恥さらしの空間でもある。そして、その先には日本の最高学府の…。
 だから東京には些か複雑な印象を受ける。幼い頃の夢に溢れた憧れの大地としての東京、そこで受験に失敗したという幻滅の大地としての東京。。+と-の価値観を備えた憧れの東京。夢、潰えた東京。まさに、東京の大学に通いながら、アルバイトをするというのが理想だった。もうこんな年になってはそんな儚い夢も叶うまい。東京へ行くのなら、また別の理由を作る必要がある。内心の決意とでも言おうか。出来ることなら、この薄ら淋しい地元を飛び出し、野生のように大空を駆け回りたい。幻滅を取り除いてくれるのはもはや東京しかない。